『カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで』(市谷聡啓、新井剛著)を読んだ。
僕はプログラマなんだけど、最近、プログラマとして技術を追求するのに限界を感じつつある。わりかしもう年齢的にもアラフォーに差し掛かってますし、思考力や記憶力が全然衰えているのを感じる。なんでまぁ、プロジェクトマネージャーとかそっち方面にキャリアパスを切り替えようかな?などと企んでいるところである。
別にプロジェクトマネージャーの方は全くやったことない訳でもないのよ。中小企業のお飾りみたいなもんだけど管理職やってた事があるのよ。その時、5人程度の小さなチームだけどチームリーダーしてたことあるのよ。まぁ、僕の場合、プレイングマネージャーみたいな形になって他人に仕事が全く振れなくて自分が潰されたんだけどさー・・・。
僕はプログラマとしては10年以上現場で働いてきているからそろそろベテランだし、中小企業を渡り歩いて大小いろんなプロジェクトを経験してきている。一人アジャイルで営業と殴り合いながら一人で仕様定義設計コーディング全部やってwebサービス構築したこともあるし、ウォーターフォールの大規模プロジェクトで派遣のプログラマとして実装やってた経験もある。ある程度、開発組織の問題点やら改善策ぐらいは分からなくもない。
なんでまぁ、上記のエントリー書いたときに今所属している開発チームのカイゼンでもしようかと思って勉強のために「カイゼン・ジャーニー」を読んだ。
すごくいい本だと思う。システム開発に情熱を持った一人のエンジニア「江島」が、一人からカイゼンを始めて、やがてチーム開発のリーダーになって会社の組織体制を変えてしまうまでの物語形式になっている。この物語がシステム屋としてはその悲哀がよく分かるというか・・・。炎上プロジェクトに巻き込まれてエンジニアが心を折られて仕事を辞めてしまうとか、突発的な仕様変更のために納期に間に合わなくなったりだとか、そういった開発現場でありがちな悲劇を、チームリーダー江島がときにチームの助けを受けて成長しながら問題を解決していくストーリーなのよ。
この本で扱われているのはアジャイル開発の開発スタイル「スクラム」や「カンバン方式」などを紹介している。またアジャイルで使うプラクティスを具体的にどう使うのか?を現場の流れに沿った形で解説している。
ただまぁ、こりゃまぁ私見なんですけど、この本で書かれているケースはベンダー系のSierとかが仕切ってる会社にアジャイル開発を導入する話であって、ウォーターフォールで開発している事が前提だったりする話だなーって感じ。中小企業のユーザ系のチームだと、メンバー一人1プロジェクトを抱えているような「一人アジャイル」がよくあるタイプだったりして微妙に参考にならない。
だけど、一人からカイゼンを始めて周りの人を巻き込んでいくみたいな精神性の話は非常によく分かるのよ。どこの開発チームも大概普段のタスクに忙殺されていて一人一人が蛸壺にハマってて、チーム開発なんて全く出来ないトラックナンバー1の状態が常態化している。この状況で誰かが辞めたりすると、下手すると会社が傾くぐらいの打撃を受けることもある。だから属人性をなくそうと僕も会社で主張しているんだけど、まぁ、下っ端が一人で吠えたところで何も変わらんわな。この本の主人公の江島くんが一人で朝会とタスクボードと振り返りをやって協力者が一人でも生まれたのは素晴らしいことだよなーと思う。
アジャイルで使われているフレームワークが物語の展開の中で使われているね。インセプションデッキとかドラッカー風エクササイズとか。本書の中でも語られていることだけど、こういうフレームワークは他の現場で使われているからいって、形だけ導入しようとしても大概うまく行かない。それぞれの開発現場でそれぞれのやり方があるはずなので、まずはそちらに寄り添ったやり方でツールをカスタマイズして取り入れるやりかたをしないといけない。だから、本書でも言われてる「小さく試みる」というのを繰り返してPDCAサイクルを回すカイゼンのやり方が有効だったりするのよ。
うちの会社のチームをカイゼンする目的でカイゼン・ジャーニーを読んでみたけどこれをそのまま使える感じでもないなって感じ。いきなりスクラム始めようって突っ込んだところで僕自身経験ないし誰も経験ないだろうし全く訳わからん状態になるのは目に見えてる。江島くんがやったようなまずは一人で改善案をトライし続けて周りに徐々に布教していく考え方が参考になったかな。とりあえず、ウチのチームは情報共有の文化がまったくないので社内のwordpressでひたすら情報共有おじさんでもやろうかな?といった所。こんなんね。
思い出した。前、社内改善案のレポートまで提出してslack入れろと上司に掛け合ったんだけど、いまだ社内チャットツールがipメッセンジャーなんだぜ。まずはメッセンジャーツールをslack入れろと再交渉するところから始めようか。
ひとまず今週末は飲み会だから上司に絡んでslackと一緒にカイゼン・ジャーニーも勧めてみるか。